もし医療崩壊していたら

もし医療崩壊していたら

 

■いろいろなことから避けることでの平穏
地方都市に暮らすということは、自然が身近にあるなど利点もありますが、LGBTに関する情報があっても高齢化が進んだ地域では人々の興味関心が薄く、相変わらず差別という地雷が至る所に埋まっています。そこで私たちは話し合った結果、地雷を避けながら、二人での生活が日々幸せを感じられるものにしようと決めました。それで例えば近所の自治会活動、お互い親族とも適度に距離を置きながら、二人での生活を楽しんできました。

 

■パートナの緊急入院
そして15年の時が流れ、今年2020年を迎えました。3月までは大きな問題もなくいつも通り過ごしてきましたが、4月になりコロナの影響で周りの状況が一変しました。まず家業のお店に人が全く来なくなり、赤字に転落しました。そんな折、パートナーの彼の眼が急に見えずらくなり、近所の眼科医院に行くと総合病院を紹介され、その日のうちに入院することになりました。急な入院であったため、彼の親族(妹さん)に知らす必要が省かれ、私が身元引き受け人としてサインし、それで大丈夫でした。しかしコロナの影響で見舞いは禁止され、翌日の手術の結果も数日後に彼からのメールで知りました。手術は成功、でもあと一週間発見が遅かったら、失明していたとのことでした。

 

■不必要なカミングアウト
ところが6月の検診で、もう一度手術入院することになり、今度は猶予が1日できました。すると入院の受付係がマニュアル通りでしか対応できない新人さんだったようで、他県に住む妹さんに来院してほしいの一点張り。そこで仕方なく私がパートナーであることを知らせることになり、したくないカミングアウトをさせられてしまいました。ちなみに手術は成功し、今はもうほぼ大丈夫です。

 

■もし医療崩壊していたら
コロナ禍の中で、緊急の手術が行われ、彼は失明の危機を脱することができてよかったですが、もし医療崩壊が起こっていたら、手術はできなかったでしょう。人間は一寸先はどうなるかわかりません。緊急時の手術は、いつでもどこでもできる状態にしておかないと守ることができる命が守られません。医療崩壊が起きないことが重要であることを、今回の体験から身をもって感じました。

 

■同性パートナーシップ制度の必要性
コロナ禍での彼の2回の入院を振り返り、入院したのが彼でよかったです。なぜなら、日頃車で行動していますが、運転できるのは私だけで、私が元気でなければ、山の反対側にある総合病院への送迎は不可能でした。それで今の生活では私は常に元気でなければならないことが求められることに気付きました。でもやがて入院することもあると思います。そこで安心して入院するには、私たちが住む市のように、パートナーシップ制度が全く整備されていないような所ではなく、せめて同性カップルのパートナーシップ制度がある所に住む必要かあるなと実感しました。

その後、退院と眼の回復祝いを兼ねて、二人で西にある二つの県に、車で旅行に行きました。今は地雷を避けて暮らしていますが、近い将来、地雷を強行突破するために、これまで以上に綿密に計画を建てる必要があることを、実感させられました。

 

(地方都市在住 パートナーと同居50代のゲイ)